経費計上のポイント

【税理士が警鐘】バーチャルオフィス利用で税務署に目をつけられないための3つの鉄則と経費処理の極意

バーチャルオフィスと税務調査の意外な関係

起業したばかりの事業者の方は、「バーチャルオフィスを利用すると、税務署に怪しまれるのではないか?」と不安に思うのではないでしょうか。

結論から言えば、バーチャルオフィス自体は何も問題ありません。

しかし、使い方を間違えると税務調査のリスクが高まるのも事実です。

近年、リモートワークの普及で急増しているバーチャルオフィス利用者。その一方で、税務署も「実態のない会社」や「不適切な経費処理」に対する監視を強めています。実際、私が担当した案件でも、バーチャルオフィス利用企業への税務調査が年々増加傾向にあります。

この記事では、バーチャルオフィスを賢く活用しながら税務リスクを回避する方法を徹底解説します。

バーチャルオフィスの利用で税務署が注目する3つのポイント

なぜバーチャルオフィスが税務調査の対象になりやすいのか

税務署がバーチャルオフィス利用企業に注目する理由は明確です。

「実態がない会社ではないか」という疑念を持たれやすいからです。

架空の取引や不正な消費税還付、ペーパーカンパニーによる租税回避など、過去に悪用事例があったため、税務署は物理的なオフィスを持たない企業に対して慎重な姿勢を取っています。

ただし、バーチャルオフィスの利用自体は完全に合法です。問題は「どう使うか」なのです。

税務署がチェックする3つの危険信号

税務調査で問題視されやすいのは、以下の3つのパターンです。

実態と登記住所の乖離が大きすぎる従業員が10名いるのに、バーチャルオフィスの住所だけしか届け出ていない。このような場合、「実際の業務はどこで行われているのか」と疑問を持たれます
高額な経費が集中している売上に対して不自然に高い経費率、特に交通費や接待交際費が多額の場合、領収書の精査対象になりやすいです
消費税還付申告を頻繁に行っている開業直後や売上が少ない時期に高額な設備投資をして消費税還付を受ける。この行為自体は合法ですが、バーチャルオフィス住所だと「本当に事業実態があるのか」を厳しく調査されます

【鉄則1】事業の実態を証明できる書類を完璧に整える

「実態がある」ことを証明する5つの必須書類

ここで、過去の事例をご紹介します。

Webデザイン会社を経営しているA氏は、実際の作業場所を自宅で実施していましたが、法人住所の登記はバーチャルオフィスにしている会社に税務調査が入った際、以下の書類をすぐに提示できたため、調査は1日で終了しました。

1. 業務日報や作業記録:日々の業務内容と作業場所を記録

2. 取引先とのメールやチャット履歴:実際に仕事をしている証拠

3. 納品物や成果物のデータ:請求書と対応する実績

4. 会議議事録や打ち合わせ記録:対面・オンライン問わず記録を残す

5. クラウドサービスの利用履歴:業務に必要なツールの契約書

自宅兼事務所の場合の注意点

自宅で作業している場合、家事按分が適切かどうかも重要です。

例えば、2LDKの賃貸マンション(家賃10万円)で、1部屋を完全に事務所として使用している場合、床面積の30〜40%程度を経費計上するのが妥当です。ただし、寝室兼作業部屋のような使い方では、按分割合を低くする必要があります。

ポイント:写真や間取り図で業務スペースを明確に記録しておくこと。これが税務調査での説明資料になります。

【鉄則2】経費計上のルールを正しく理解する

バーチャルオフィス利用料は経費になるのか?

「バーチャルオフィスの月額料金は経費として認められますか?」

この質問への答えはYESです。ただし、勘定科目は「支払手数料」または「地代家賃」として計上するのが一般的です。

月額5,000円〜3万円程度の範囲であれば、通常は問題なく経費として認められます。しかし、不自然に高額なプランを契約している場合は、その必要性を説明できるようにしておきましょう。

要注意!認められない経費パターン

ここでは経費として認められない失敗事例をご紹介します。

個人事業主として活動していたB氏が、以下のような経費計上をして税務調査で否認されました。

× ダメな例

  • バーチャルオフィスで郵便物を受け取っているだけなのに、交通費として毎日の「通勤費」を計上
  • 実際には自宅で作業しているのに、バーチャルオフィス近くのカフェ代を「事務所近隣での打ち合わせ費用」として計上
  • 私用の買い物と混在したレシートを、バーチャルオフィス所在地での購入という理由だけで経費化

○ 正しい例

  • バーチャルオフィスで郵便物を実際に受け取りに行った日の交通費(Suicaの履歴などで証明可能)
  • 取引先との打ち合わせで実際に使用したカフェ代(相手方の名刺や議事録で証明)
  • 業務に必要な物品購入(用途が明確で、業務との関連性が説明可能)

領収書管理の極意

電子帳簿保存法の改正により、2024年以降は領収書のデジタル保存が一般化しています。しかし、ただスマホで撮影するだけでは不十分です。

推奨する管理方法

1. クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワードなど)と連携

2. 支出の都度、メモ機能で「誰と」「何のために」を記録

3. 月次で税理士がチェックできる体制を構築

【鉄則3】登記住所と実際の活動場所を明確に区別する

届出書類の住所記載ルール

開業届や確定申告書に記載する住所について、混乱している方が多いです。

基本ルール

  • 納税地(原則):実際に事業を行っている場所(多くの場合は自宅)
  • 事業所所在地:登記住所(バーチャルオフィス)

確定申告書には両方を記載する欄がありますので、正確に記入しましょう。虚偽の記載は重加算税の対象になる可能性があります。

取引先への説明はどうすべきか

「バーチャルオフィスを使っていることを、取引先に言うべきですか?」と言ったご質問を過去に受けたことがあります。

この場合、「聞かれたら正直に答えるべき」です。

最近では、多くの企業がバーチャルオフィスの利用に理解を示しています。むしろ、「コストを抑えて効率的な経営をしている」とポジティブに受け取られることも少なくありません。

ただし、契約書には登記住所を記載し、実際の連絡先(携帯電話やメール)も併記しておくとトラブル防止になります。

税務調査が来たときの対応策

慌てないための事前準備

もし税務調査の連絡が来たら、以下のステップで対応しましょう。

Step 1:顧問税理士に即座に連絡

税理士がいない場合は、調査の日程を調整している間に急いで税理士を探してください。税理士の立ち会いがあるかないかで、調査の結果は大きく変わります。

Step 2:調査で求められる可能性が高い書類を準備

  • 3年分の確定申告書と総勘定元帳
  • 通帳(事業用・個人用の両方)
  • 請求書・領収書のファイル
  • 契約書類一式
  • 事業の実態を示す資料(前述の5つの書類)

Step 3:自宅やオフィスを整理整頓

税務調査は事業所で行われるのが基本です。自宅で調査を受ける場合は、業務スペースを明確にして、私用のものと混在しないよう整理しておきましょう。

調査当日の心構え

調査官は敵ではありません。適正な納税をしているかを確認する仕事をしているだけです。

やってはいけないこと

  • 嘘をつく、書類を隠す
  • 感情的になる、攻撃的な態度を取る
  • 税理士抜きで重要な判断をする

やるべきこと

  • 質問には正直に、分からないことは「確認します」と答える
  • すべての回答を税理士に相談してから答える
  • 調査の内容をメモに取る

バーチャルオフィス利用者が税理士を選ぶポイント

こんな税理士は避けるべき

残念ながら、すべての税理士がバーチャルオフィスビジネスに精通しているわけではありません。

注意すべきサイン

  • 「バーチャルオフィスはリスクが高いからやめた方がいい」と一方的に否定する
  • クラウド会計ソフトに対応していない
  • 月次での面談やチェックがなく、年1回の確定申告だけ対応

理想的な税理士の条件

1. スタートアップやフリーランスの支援実績が豊富

従来型の企業だけでなく、新しい働き方に理解がある税理士を選びましょう。

2. レスポンスが早い

メールやチャットでの相談に迅速に対応してくれる税理士は、緊急時にも頼りになります。

3. 予防的なアドバイスをしてくれる

問題が起きてから対処するのではなく、リスクを事前に指摘してくれる税理士が理想です。

相続対策も視野に入れた税理士選び

事業が軌道に乗り、資産が増えてくると、次に考えるべきは相続対策です。

特に、個人事業主から法人化した場合、株式の評価や事業承継の問題が発生します。バーチャルオフィス利用企業であっても、将来的な資産承継は避けて通れない課題です。

私たちが運営する世田谷相続事業承継センター(/souzoku/)では、事業承継と相続税対策を一体的にサポートしています。バーチャルオフィスを活用した効率的な事業運営から、将来の相続対策まで、ワンストップでご相談いただけます。

当センターの強み

– 公認会計士・税理士・社労士などの専門家チームによる総合サポート

– 現在の事業運営だけでなく、10年後、20年後を見据えた戦略立案

– 初回相談無料で、あなたの状況に合わせたカスタマイズプラン

賢くバーチャルオフィスを活用するために

バーチャルオフィスは、うまく使えば起業コストを大幅に削減できる優れたツールです。しかし、税務リスクを理解せずに使うと、思わぬトラブルに巻き込まれる可能性があります。

この記事の3つの鉄則を再確認

1. 事業の実態を証明できる書類を完璧に整える

2. 経費計上のルールを正しく理解する

3. 登記住所と実際の活動場所を明確に区別する

これらを守れば、税務調査を恐れる必要はありません。

もし少しでも不安があれば、専門家に相談することを強くお勧めします。自己判断での対応が、後に大きな問題を引き起こすケースを数多く見てきました。

あなたのビジネスが健全に成長し、将来的な資産承継までスムーズに進むよう、私たち専門家がサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。

Conduct

植西 祐介
コンダクトグループ(株式会社コンダクト/税理士法人コンダクト/社会保険労務士法人コンダクト) 代表、公認会計士/税理士/社会保険労務士