相続が発生すると、様々な手続きが必要になります。それぞれの手続きには期限が設けられており、これらの期限を守らないと、思わぬ不利益を被ったり、貴重な権利を失ったりすることもあります。
そこで本記事では、相続開始後に行うべき期限がある手続きを分かりやすく説明していきます。
相続税申告期限(亡くなった日から10ヶ月)までに行う主な手続きの一覧
1. 死亡届の提出(7日以内)
7日以内に、市区町村の役所に死亡届を提出する必要があります。通常は病院で死亡診断書が発行され、それを添えて提出します。
2. 健康保険の資格喪失手続き(5日 ~ 14日以内)
加入していた健康保険の資格喪失手続きをして、保険証を返却します。なお、この手続きの期限は加入している医療保険制度によって異なるので注意が必要です。
会社の健康保険に加入していた方は、資格喪失手続きは会社で行います。そのため、勤務先などに亡くなったら速やか(5日以内)に連絡をしましょう。なお、亡くなった翌日から保険証が使用できなくなるため、扶養されていた家族は、別の家族の扶養に入る、または、国民健康保険へ切り替える手続きも必要になります。
国民健康保険または後期高齢者医療保険に加入していた方は、亡くなった日から14日以内に市区町村の役所で手続きをする必要がありますが、市区町村によっては死亡届を提出すれば別途手続きを省略できるところもあるため、死亡届の手続時にご確認することをオススメします。
3. 年金受給停止の手続き(10日 ~ 14日以内)
故人が年金を受給していた場合、受給停止の手続きをしなければなりません。受給していた年金が厚生年金の場合は10日以内に、国民年金の場合は14日以内に手続きをする必要があります。
もし、この手続きが遅れて年金が振り込まれた場合には、後で返還をする必要があります。もし仮に生活費に使い込んでしまい、返還できない場合には、不正受給として扱われることもあるので、忘れずに手続きをしましょう。
4. 相続放棄(3ヶ月以内)
故人に多額の借金があり相続を放棄したい場合には、3ヶ月以内に家庭裁判所で相続放棄の手続きをする必要があります。
期限を過ぎると全ての遺産(財産と債務)を相続することを選択したものとみなされてしまい、仮に故人に多額の借金があっても返済義務を承継することになるので、自分の財産を守るためにも忘れずに手続きをしましょう。
5. 準確定申告書の提出・納付(4ヶ月以内)
被相続人が確定申告をする必要がある場合には、4ヶ月以内に、相続人が被相続人の所得税を申告して精算をする必要があります。
なお、期限までに申告をしなかった場合には、適用を受けることができない優遇制度がいくつかあるため、結果として税負担が増えることがあります。また、納税がある場合には、延滞税や加算税が課税されることもあります。そのため、故人が毎年確定申告をしていた場合には、早めに税理士に相談することをオススメします。
6. 相続税申告書の提出・納付(10ヶ月以内)
相続をした遺産の合計額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合には、10ヶ月以内に相続税の申告と納付をする必要があります。
なお、期限までに申告・納付をしなかった場合には、準確定申告と同様に、優遇制度が適用できず税負担が増えることや、延滞税や加算税が課税されることもあります。そのため、故人にたくさんの財産がある場合には、早めに税理士にご相談することをオススメします。
お金がもらえる重要な手続きの一覧
1. 未支給年金の請求
老齢年金は2月分を後払いの形で支給されています。そのため、年金受給者が亡くなると必ず未支給年金が発生しています。そのため、被相続人が年金受給者であった場合には、死亡月分までの未支給年金を請求できます。未支給年金は申請をしないと受け取ることができない(期限は5年)ため、忘れずに申請をしましょう。
2. 遺族年金等の請求
未支給年金の他にも、所定の受給要件を満たせば、故人が厚生年金に加入していた場合には遺族厚生年金、故人が国民年金に加入していた場合には遺族基礎年金などの請求をすることができることができます。遺族年金も申請をしないと受け取ることはできない(期限は5年)ため、忘れずに申請手続きをしましょう。
なお、受け取った遺族年金等は、未支給年金とは異なり、相続税も所得税も課税されません。
3. 埋葬料・葬祭費の申請
葬儀費用の負担を軽減するために、葬儀を行った方に対して最大7万円程度の給付金(健康保険の場合は「埋葬料」、国民健康保険や後期高齢者医療保険の場合は「葬祭費」という名目)が支給されます。給付を受けるためには、2年以内に申請をする必要があります。
なお、受け取った埋葬料や葬祭費は、相続税も所得税も課税されません。
4. 高額療養費の申請
故人が亡くなる前に高額な医療費を支払っていた場合には、本来支給されるべきだった高額療養費を相続人が申請することができます。高額療養費の申請期限は、診療月の翌月から2年以内となっているので、忘れずに申請をしましょう。
なお、高額療養費は相続財産に該当するため、遺産分割の対象になり、また、相続税が課税されるため、相続税の申告期限前に手続きを済ませることをおススメします。
5. 生命保険金の請求
故人が生命保険の被保険者になっている場合には、保険金の受取人となっている人が、保険会社に対して、死亡保険金の請求手続きを行います。生命保険金の時効は一般的には3年となっているため、忘れずに申請をしましょう。
なお、生命保険金は、相続税の課税の対象になる(ただし受取人が相続人の場合には一定額まで非課税になります。)ため、相続税の申告期限前に手続きを済ませることをオススメします。
遺産分割に期限はない!?
ここまでで期限がある相続関係の手続きを紹介してきましたが、実は遺産分割そのものに法定期限はありません。
では、相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなかった場合にはどうなるのでしょうか。遺産分割が終わっていないことを理由に相続税の申告期限は延長されないため、相続税の申告期限までに遺産分割が終わっていない場合には、法定相続分で取得したものと仮定して、相続税の申告と納税をすることになります。
ただし、遺産分割が相続税の申告期限に間に合わない場合には、遺産分割が間に合っている場合の申告と比べて、以下のようなデメリットがあり、結果として納税額が多くなります。
- 配偶者については、法定相続分(最低1億6,000万円)までは相続税がかからない特例(配偶者の税額軽減)がありますが、未分割の場合にはこの特例が適用できず、配偶者も納税が発生します。
- 故人が住んでいた自宅の敷地などは、最大80%評価減ができる特例(小規模宅地等の特例)がありますが、未分割の場合にはこの特例の適用ができず、遺産分割が確定している場合より多額の納税が必要になります。
そのため、相続税の申告期限までに遺産分割を終わらせることは義務ではありませんが、遺産分割を相続税の申告期限までに行うことで、結果として納税の負担を軽減することに繋がります。
遺産分割をスムーズに進めるためにも、相続が発生する前からご自身の遺産の状況を整理してどのように遺産を分けたいか意向をご家族に伝えることや、複雑なケースでは専門家に早めに相談することが効果的です。
なお、もし仮に遺産分割が相続税の申告期限に間に合わなかった場合にも、相続税の申告時に「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出することで、遺産分割後に各種特例の適用を受けられます。
実際に遺産分割が行われた場合には、遺産分割が終わった日から4ヶ月以内に本来の相続税額に修正する手続きをすることで、仮納付した相続税額と実際の相続税額との差額を精算することもできます。
相続財産を寄付するならいつまでがいい?
高額な相続で社会貢献を検討されている場合には、寄付という選択肢を検討されている方もいると思います。実は、相続した財産を国や地方公共団体といった公益性の高い団体に寄付をした場合には、その寄付をした財産は相続税が非課税となる特例があります。
ただし、この特例を受けるためには、相続税の申告期限までに寄付を行い、その旨を相続税申告書に記載する必要があります。相続税の申告期限後の寄付については非課税にはならないので、相続税の申告期限までに寄付をすることがおススメです。
なお、この特例については、相続した預貯金でふるさと納税をした場合も、地方公共団体への寄附に該当するため、非課税になります。例えば、相続で現金1,000万円を取得した方が、そのうち100万円を相続税の申告期限までにふるさと納税をすれば、その100万円は相続税の課税対象から除外することができ、また、相続人の所得税・住民税の寄附金控除の適用も受けることができます。
そのため、相続財産の一部をふるさと納税(寄付)する場合には、相続税の申告期限までに完了させることで、よりたくさんの税金の恩恵を受けることができます。
まとめ
相続に関する手続きには様々な期限があり、それを守らないと、税負担の増加や権利の喪失などの様々な損失を被ることもあります。そのため、相続が発生したら、まずは全体像を把握しながら、時系列でやるべきことを整理しましょう。
また、事前に相続に向けた準備をすることもとても重要なことになります。相続が発生する前に、財産の整理や相続方針の意思表明をしておくことで、相続発生後の手続きがスムーズになります。遺産分割を相続税の申告期限までに完了させることで、様々な税制上の特例を最初から最大限に活用することができます。
相続の手続きは複雑で、また、何回も行うような手続きではないため、忘れてしまうことも多々あります。しかし、期限を逃すと取り返しのつかない事態になることもあります。

川上誠仁
「何から手をつければいいのかわからない」「期限が迫っていて困っている」といった状況でも、専門家のサポートがあれば安心です。相続でお悩みの方は、ぜひお早めにご相談ください。

